【2021年 最新版】 香港の風水 ~ 中環(セントラル)と風水戦争

【2021年 最新版】 香港の風水 ~ 中環(セントラル)と風水戦争

香港では穴の開いたビルや、丸い門など利便性としては首をかしげるような建物が数多く存在しています。それらはおしゃれではなく、風水に基づいて設計されています。建築士より風水師の意見を取り入れる!という衝撃な事実もありますが、私たちの生活に根付いている風水文化をここでは読み解いていきたいと思います。

香港島のプロムナード

MTR金鐘(アドミラルティ)駅のA出口を出て大通りの歩道橋を渡り海に向かって歩くと、添馬(ティマール)公園となります。そこから中環(セントラル)のフェリーターミナルまで、海岸線のプロムナードを歩いていくと、右手は世界の三大美港=ビクトリアハーバーに臨み、対岸には、九龍半島のビル群、さらに奥には雄大な山々が広がります。
そして、左手、香港島の山側には香港でも有数の超高層ビル群が並ぶという、まさに絶景のウォーキングを楽しむことができます。

(添馬公園から香港政府新庁舎に臨む)

プロムナードというと、香港では、九龍半島側の尖沙咀(チムサーチョイ)のプロムナード、そして、ブルース リーやアニタ ムイの銅像やムービースターたちの手形で彩られたアベニューオブスターズが、ここ2~3年でリニューアルされ、かなりきれいになってきていますが、香港島側の開発もまったく引けを取りません。

(尖沙咀プロムナード)

香港島側の海沿いの遊歩道も整備が進んでおり、中環(セントラル)から、金鐘(アドミラルティ)、湾仔(ワンチャイ)、銅鑼湾(コーズウェイベイ)、北角(ノースポイント)と、ここ数年で大規模な湾岸開発が進められています。

特に、中環(セントラル)・金鐘(アドミラルティ)間では地下鉄MTRで1駅分となり、歩いても10分という距離ですが、この遊歩道のハイライトともいえる区間といえるので、天気がよい日の時間に余裕がある移動では、タクシーや地下鉄やバスを利用するのではなく、海岸線にでてビクトリア湾を眺め、潮風に吹かれながら、香港島のプロムナードのクライマックスを味わう優雅な散歩のお時間をお過ごしいただくのはいかがでしょうか。

(金鐘湾仔銅鑼湾)

そして山側の摩天楼を見上げ、この中環(セントラル)が、「なぜ香港の政治や経済の中心になり得たのか?」「 なぜ、香港の高層ビルにはユニークな形状のものが多いのか?」 そのあたりを考察するために、香港における風水について理解しておくと、優雅なプロムナードの散歩にさらにわくわくする知的探求の要素も加わってきます。

風水の基本について

風水で一番大切なのは、「」 とよばれるエネルギーの流れで、しばしば空想上の生き物、「龍=ドラゴン」に喩えられます。
風水は、日本では、家を建てるときや引っ越しをするときに方角や間取りなどで話題に上がるようですが、 決して占いやおまじないではなく、「気」という自然のエネルギーの流れを読んで生かすためのテクニックなのです。

本来は、中国の歴代の皇帝たちが、都やお城や寺院の建築、戦の戦術など、国家レベルの重要な意思決定をするために使われて発展してきた技術で、現代の地理学・天文学・地政学・統計学・環境学・中医学などにもつながっています。

風水は今から3,000年近くも前の中国から伝えられる「陰陽五行」つまり「陰陽思想」と「五行思想」に基づいています。 

「陰陽」は、ものごとを 「陰」 と 「陽」 のカテゴリに分類し、その調和や波動によって現象を説明するもの、「五行」はすべてのものを「木Wood」「火Fire」「金Metal」「土Earth」「水Water」 の5つに分類してその関係で説明するものです。

「陰陽」と聞くと思い浮かぶのがこちらの「太極図(たいきょくず)」ではないでしょうか。

(陰陽太極図)

「太極図」は「陰」と「陽」を表すもので、黒色の「影」は「内に蓄える静的なエネルギー」、白色の「陽」は「外に放出する動的なエネルギー」、を表すものです。
それは善悪や優劣というものではなく、表裏一体で循環するもの、陰が強くなれば陽に 陽が強くなれば陰になるように、その周期やバランスに着目し、分析し、予測し、行動の指針とする考え方なのです。

「五行」の図はこちらです。

(五行の考え方)

「木Wood」「火Fire」「金Metal」「土Earth」「水Water」に、それぞれ「方角」や「色」や「季節」などをはじめ、そのほかにもさまざまな要素を帰属させ、その関係性によりものごとを説明しています。

五行の関係性には生かし合う「相生(そうしょう)」の関係と、打ち消し合う「相剋(そうこく)」の、2種類の関係があります。
「相生(そうしょう)」では、木は燃えて火になり、火は燃えて灰となり土を作り、土の中から金属が産出し、金は融解し水になり、水は木を育てる、という、生かし合う関係性です。

「相剋(そうこく)」では、水は火を消し、火は金属を溶かし、金属は木を傷つけ切り倒し、木は土を利用し押しのけて成長し、土は水を濁し(にごし)流れを止める、という、打ち消し合う関係性です。
風水では5つの要素の「相生(そうしょう)」と「相剋(そうこく)」の関係でものごとを説明しているのです。

(五行の考え方_2)

色について

色の話がでましたので、それぞれの「色」の代表的な意味について簡単にご紹介します。色も、風水の重要な要素です。
赤は、風水でも強い力を持つ火の色。そして、活性化の運気、ギャンブル、ラッキー、おめでたい、などの意味があります。
黄や金は、金運アップ、事業成功、リッチな生活、ときめき、など を意味します。
は仕事や信頼そして意思疎通。
は健康、幸福、成長の色とされます。
は、邪気を払い、守りを固める力があるといわれています。
は、土の気、土台、自然を表す色です。
は、リセット、純粋などを意味します。
香港の街中の看板やネオンでは、赤や黄色の原色を多く使っていますが、デザインとしての色使いというよりも風水的な意味合いが強いといえます。

数字について

また、 風水では数字にも意味をもたせてあり、加えて、香港ではその発音などで縁起を担いだりもします。
1(yat1)は、「始まり」「No1」。 運気が生まれる大吉の数です。
2(yi6)は、「調和」、「調整」。また、「易(yi6)」と発音が似ているので、「簡単・シンプル」 という意味を持たせたりします。
3(saam1)は、「成長」、「社会性」。 また、「生(saang1)」と近い発音なので、life、「生きること」 に掛けたりします。
4(sei3)は、「緑」、「土地」、「地盤」を意味します。 風水的には、「人間関係の安定」 をあらわしています。一般的には、「死(sei2)」と発音が近いのでよくない数字とされていますが、「水(seoi2)」と発音が似ているので、「水」は「お金」なのでよしとしてしまう説もあります。
5(ng5)は、「魔除け」、「厄払い」、「禁止」、「中心」の意味があります。 災難から身を守る力があるといわれています。
6(luk6)は、「才能」 、「向上」を意味し、出世、昇進など、仕事運を得る数字と言われています。 また、「樂(lok6)」と発音が近いので、「楽しい」「楽」という意味を加えたりします。
7(chat1)は、「充実」、「絶対」。 そのまま 「ラッキー7」 の意味を持たせたりしています。
8(baat3)は、「循環」、「繁栄」。 また、「發(faat3)」と発音が似ているので、「富」 「財」の意味を掛け、お金が回る非常に良い数字、金運の象徴的数字として扱われています。
9(gau2)は、「生命力」。悪い気を消す力を持つといわれます。また 「久(gau2)」と同じ発音なので「長寿」と掛けたりもします。

香港人はひとつひとつの数字にも、かなりのこだわりをもっているようすがうかがえます。  

(数字の考え方)

中環(セントラル)の風水と風水ビルについて

それでは、これらの風水の考え方で、香港そして中環(セントラル)の地形をみていきましょう。
九龍の九つの山脈から流れ出した強いエネルギー「龍脈」と呼ばれる「気」の流れが、九龍半島を南下して、ビクトリア湾の「水」を得て勢いを増し、一気に南にあるビクトリアピークへ駆け上った登った後に、下りてくる、よい「気」が集まる場所。 これが、中環(セントラル)における 「気」 のイメージです。お金(経済)と権力(政治)の重要な拠点とするには理想的な土地といえます。香港では 「幸せになるためには、龍が駆け抜ける場所に住め」 と言われているのです。

(中環の気)

セントラルの風水ビルは、そのたぐい稀な、ありがたい「龍脈」のパワーをできるだけ享受するために、 「龍(=ドラゴン)」たちが巻き付いて登りやすいように、そして、ビルの真ん中にわざわざ空洞を作って「龍」が通り抜けしやすいようにと、デザインされたものが多いです。

(リッポー)

また、ビルの上の部分を下の部分よりも敢えて太く大きく天に向かって末広がりに作っているビルも多いのですが、これはできるだけたくさん宇宙からの「気」を受け取れるように、と、それぞれ意味を持っています。

(ピークタワー)

香港では、ビルを新築するときに、設計やデザインをする建築士のほかに、かならず、風水師も呼ばれて、意見が合わないときには、建築士ではなく、風水師の意見のほうが重要視されるくらい、風水の考え方を大切にしています。それゆえ、風水の理想を追求するために、手間やお金や構造的なリスクを惜しまない作りの建物が香港には数多く建てられていて、それがこのビクトリア湾両岸の独特なスカイラインを彩っているのです。

(スカイライン)

ICCとIFC

香港島で一番高いIFC=インターナショナル ファイナンス センターの第二期オフィスビル(420m)です。香港で一番高いICC=インターナショナル コマースセンター(484m) とともに、香港への門=ゲートを形作っているように見えます。

(ICCとIFC)

実際の役割としても、IFCは香港国際空港までたったの20分少々でつなぐ鉄道=エアポートエクスプレスのターミナル駅でもあるMTR香港駅に直結。 ICCはエアポートエクスプレスの駅=九龍駅とつながるのみならず、2018年にオープンした香港西九龍駅と直結し、中国各地への高速鉄道のターミナル駅にもなっているんです。 2011年にはICCの102階から最上階の118階までを利用しリッツカールトンがオープンし、香港で一番高いホテルとして話題になりました。 最上階には、ルーフトップバーもあり、当然、香港で一番高いバーなので、Party Peopleの皆様にもおすすめです。

(オゾン)

ICCはよくみてみると、トップとボトムの部分が中央部分よりも細くなっていて 、近くでみるとわかりますが、四隅が鱗(うろこ)を模したデザインになっているんです。 そうです。 ビルそのものが天空に登る、龍=ドラゴンをイメージしているのです。
また、そのICC周辺エリアは西九龍文化地区と言って、香港の文化の中心となる劇場やイベント会場や公園も建設中の広大な開発地区にもなっています。

(西九龍文化地区)

IFCもICCも、それぞれ、オフィスビルやショッピングモールなど大きな複合商業施設の中心的なビルとなっています。

エクスチェンジ スクエア

そしてIFCの近くのこちらのすこし茶色がかったビル群がエクスチェンジ スクエアです。
香港証券取引所をはじめ、世界の有数の証券会社が多く入るオフィスビルで、日本の領事館なども入っています。 入口の噴水には、お金が回るといわれ縁起のいい数字の8をイメージしたオブジェや、お金を掌握する牛のオブジェなど、風水的象徴を並べています。

(エクスチェンジスクエア)

ジャーディンハウス

その左手の丸い窓がたくさんあるのがジャーディンハウスというオフィスビル。
このビルが、1970年代ではアジアで一番高いビルでした。 立地はもとよりオフィスビルとして非常に造りが良いそうでテナントが長く利用することで有名です。 なお、風水で、丸い窓は龍の通り道とされています。

(ジャーデインハウス)

香港中央郵便局

その手前の白い低い建物が香港中央郵便局です。セントラルでも一等地に建てられているのは、風水で 「幸運を招き入れる場所」とされているからでしょうか。普通の郵便局としてワークしているほかに、HONG KONG POSTのオリジナル商品や記念切手など、お土産ものを探すにも楽しいのでおすすめです。

(香港中央郵便局)

マンダリンオリエンタルホテル

左へ行くと、マンダリンオリエンタルホテル。 客室はもちろんロビーやスパなど、いたるところに風水的な要素を取り入れ「気」の流れに配慮したことで有名なホテルです。 このマンダリンのビルで25階建てですから、その周りのビルがどれだけ高いかわかるかと思います。

(マンダリンオリエンタルホテル)

ビルをつなぐ歩道橋

マンダリンオリエンタルはその奥のショッピングモールとオフィスが入ったプリンスビルと歩道橋でつながっています。 中環(セントラル)のこのエリアでは、たくさんの中心的な建物が隣同志だけではなく、大通りをまたいで歩道橋つながり合っているので、Google Mapのストリートビューなどで確認しておけば、地下鉄の中環(セントラル)駅や香港駅からずっとビル伝いに移動できますから、雨の日でもまったく濡れずにショッピングや食事を楽しむことができるのも、この中環(セントラル)の魅力です。

(歩道橋)

スタンダードチャータード銀行ビル

その奥の少し細長くみえる茶色いビルがスタンダードチャータード銀行ビルです。はす向かいにあるスタチュースクエアに風水的に長期的な金運が認められたたことで、そのパワーを受け取るために、広場に面した部分をわざわざ斜めにカットし、正面から対峙させたことで有名です。

(スタンダードチャータード銀行)

HSBC~香港上海銀行本店ビル

その左手の中央にガラスをたくさんつかったビルが、HSBC=香港上海銀行の本店ビルです。このHSBC本店ビルは1985年に完成しましたが世界初の「吊り構造」を利用した超高層ビルとして話題になりました。 柱ではなく、ケーブルが引っ張り合う力で支える構造になっています。 このビルも、ビクトリアピークからの「気」の流れを遮らないように地上階に壁や窓のない吹き抜けを採用したり、床面に凹凸を作って勢いのある龍の背を表現したり、エスカレーターを龍の口に見立てて八の字に設置したり、入口に大きな獅子の像を2体配置したりと、いたるところに風水の要素を取り入れています。

(HSBC)

中国銀行タワー

その少し左にある尖ったユニークな形のビルが中国銀行タワーです。 スタンダードチャーター銀行と、HSBC=香港上海バンクと、中国銀行の3つの銀行が、香港の紙幣=香港ドルを発券している3大銀行です。 ところで、この、中国銀行タワー、何の形にみえますでしょうか?  鋭利な刀や包丁のように見えませんか? 右にあるライバルのHSBCの本社ビルに切りかかっているようにも見えます。

(中国銀行タワー)
(中国銀行)

中環(セントラル)風水戦争

建物が作られた1990年当時は、刃の部分が向けられた周辺のビルの運気を下げている、などと、話題になっていましたが、運気を下げられた被害者筆頭のHSBC本社ビルもそれに対抗して、中国銀行タワーに向けて、屋上に大砲の形のオブジェを造りました。 風水的には、刃物(金)に対して大砲(火)は、火が金属を溶かすことから相剋(そうこく)の図となります。風水の基本を使って悪い「気」を打ち消した形です。 HSBCは大砲を作った翌年から業績を回復したということですが、この2つのビルは中環(セントラル)風水戦争の立役者になっています。 

(バチバチの2社)

長江センター

中国銀行から少し右に戻って四角い超高層ビルが、アジアの鉄人=李嘉誠(リーカーシン)の長江実業ビル=長江センターです。 長江実業は、不動産、証券、保険、通信、電力、バイオテクノロジーなど、いろいろな分野で活躍している、香港最大の有名なコングロマリットのホールディング会社です。

香港で100ドル使うと10ドルはリーさんの財布に入る、と言われているくらいの圧倒的なシェアをもっています。 このビルは、中国銀行タワーとHSBC本社ビルの間に割って入る形で1999年に建てられ、セントラル風水戦争は沈静化したこととなっていますが、このビルも、隣の中国銀行タワーから切り掛かる刀に対して鉄格子のような窓枠をもって対抗しているといわれています。

(長江センター)

まとめ

風水的な見地から、中環(セントラル)地区の地理や、代表的なビルをピックアップしてみてきましたが、このほかにも、九龍のICCの横にある凱旋門、そして、金鐘(アドミラルティ)ではリッポービル、中国人民解放軍ビル、香港政府新庁舎、湾仔ではコンベンションセンターなど、このエリアには風水を実践したビルがたくさん建てられています。

中環(セントラル)とこれらの風水ビル群、そこに秘められた風水の考え方などを紐解いてみると、香港の人々が、運気、そして、方角や、色や、数字などをはじめとしたものごとに、ていねいに風水的な意味を結び付けた上で、ひとつひとつ回収していくような、とても前向きで建設的な発想や思考を常に行いながら生活をしているようすがみてとれます。
風水は精神衛生的にもよさそうです。

中環(セントラル)のビル群

動画紹介

2020年12月10日の日本旅行業協会のウェビナーに採用された風水に関する動画で、この記事の内容をご案内しています。 Google Earthや、各所の録画などをふんだんに利用して、弊社の香港人スタッフのウィニーさんがわかりやすく香港の風水と風水ビルをご紹介していますので、ぜひご覧ください。

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