天女の舞アプサラダンスを徹底解剖~カンボジアの伝統舞踊を読み解く~

天女の舞アプサラダンスを徹底解剖~カンボジアの伝統舞踊を読み解く~

天女の舞。優雅な響きのダンスは、カンボジアにきたら必見のアプサラダンスです。アンコールワットで有名なシェムリアップで夕食を食べながら、ダンスを鑑賞することができます。東南アジアの他国とは異なるゆっくりとした音楽とダンスの動きが特徴的です。アプサラダンスってどんな踊り?歴史は?どこで見れるの?気になる点を徹底解剖してお伝えします。

アプサラダンス・天女の舞の由来

アプサラは、インド神話に登場する水の精の名前「アプサラス」からきています。その名前には、「水の中で動くもの、雲の海に生きるもの」という意味があります。水の精アプサラスは、天女としても古代から拝められてきました。誕生秘話には、乳海攪拌の時に生まれた存在だとする説もあります。ラーマーヤナの中ではアプサラと呼ばれています。

アプサラスは水の精でありながら、神々を接待するための踊り子としての役割も担っていました。アプサラは姿を自由に変えることができ、妖艶な美貌によるダンスで人間をも誘惑し、墜落させることもあるとされています。

天女アプサラスに起源され、アプサラダンスが生まれました。

アプサラダンスの起源は?

アプサラダンスの歴史は9世紀まで遡ることができます。9世紀初期にジャヤヴァルマン2世により栄えたアンコール朝の宮廷舞踊のひとつとして生まれました。

アンコール朝の全盛期をむかえた12世紀前半、スールヤヴァルマン1世の時代には、アンコールワットの建設が開始され、壁画の回廊にはデバターが踊るアプサラダンスは彫刻されています。
その後、ジャヤヴァルマン7世により建てられたアンコールトムの中心「バイヨン」でも、アプサラダンスを踊るデバターがレリーフとして残っています。

デバターとは:女神をはじめとする、女官や踊り子たちのこと。

レリーフとは:浮彫りのこと。平面を彫り込む、もしくは平面上に盛り上げて起伏を与えて図像や装飾模様を表す造形表現。

滅亡の危機に陥ったアプサラダンス

アプサラダンスがカンボジアの伝統となるには簡単な道ではありませんでした。隣国の侵略や国内での弾圧など様々な困難のなかでも、その時代に生きた人々が復興に努め、今日に続いている文化の1つです。

タイのアユタヤ朝による侵略

13世紀からのカンボジアの歴史は、タイのアユタヤ朝やベトナムのフエ朝からの侵略が続き、1432年ついにアンコール朝はアユタヤ朝に滅ぼされてしまいました。
その際、宮廷の音楽家や踊り子など約9万人がアユタヤ朝の捕虜とされ、クメール文化は消え去ったも同然でした。
この時が、クメール文化であるアプサラダンスは1度目の滅亡の危機でした。
しかしながら、アユタヤ朝にてクメール文化は受け入れられたので、アユタヤ朝の中でタイの文化と混ざり合いながら、舞踏、音楽、影絵芝居など発達していくことになりました。

その後、18世紀後半に、近代カンボジアの基盤をつくったとされるアンドゥオン王の時代では、クメール独自の伝統芸術を復活させようと務めました。
また、ベトナム歌劇の「アヤイ」の動きや振り付けを取り入れて、新しい舞踊歌劇を誕生させました。従い、アンコール朝で踊られていたオリジナルの舞踊がどのようなものであったかは定かではありません。
しかしながら、フランスに編入された後にもマルセイユで開催された植民地博覧会に参加し、カンボジアの伝統舞踊はフランスをはじめ多くのヨーロッパの人々に、伝わることとなりました。

ポルポト政権による芸術の弾圧

1970年~1993年まで続いたカンボジア内戦1975年の時代に、アプサラダンスが滅亡する第2の危機に陥りました。
1975年から4年間続いたポルポト政権下では、舞踊教師・振り付け師・踊り子は王室に関わるものとされ、多くの人が虐殺されました。彼ら以外にも、音楽の演奏者や伝承者も投獄・殺害の対象となり、結果として多くの伝統文化が破壊されることになりました。

1割の生存した舞踊家や音楽家は海外に逃れていたことから、生き残った数名の舞踊や音楽の指導者によって再び伝統文化が復興され、1981 年に芸術学校が再編されました。
カンボジア内戦後の衣食住もままならない混乱の中、舞踊や音楽を含めた伝統芸能を復興させようとした彼らの情熱は、クメール民俗としてのアイデンティティを賭けたものだったとされています。

社会主義時代の舞踊は国のものとなり、歌詞の言葉や内容も政治の影響を強くうけましたが、1991年のパリで行われたカンボジア和平パリ国際会議以降、国が立憲君主制となるとともに、舞踊や音楽といった伝統芸能も、再び、王制と関わりを持つようになりました。

カンボジア内戦後の努力により、現在までつづく伝統舞踊として復活を遂げることができました。

アプサラダンスの魅力とは

・しなやかな手や足の動き
なんとアプサラダンスには、4500を超える踊りの型があるとされています。4500の型を身体に覚え込ませるだけでも何年も費やすと必要があります。踊り子の反り返った手と指の動きや形には、それぞれ意味があるようです。踊りの型にあわせたそれぞれ異なる手、首、足の動き、視線により演目の登場人物を演じています。アプサラダンスを鑑賞する際には、指先や足先にまでも注目してください。

しなやかな手や足の動き

・きらびやかな衣装
もともと宮廷舞踊として生まれた舞踊なので、衣装や装飾品も華やかで美しいです。タイのアユタヤ朝から侵略を受けた後は、タイ様式の衣装や装飾が一般的でしたが、20世紀半ばに、コマサック女王がアンコール遺跡のレリーフを模した古代クメール様式へ戻すことに成功しました。

きらびやかな衣装

・独特なリズミカルな音楽
アプサラダンスでは、一般的に7種類の伝統的な打楽器が使用されています。大きく分けて木琴、鐘、太鼓などです。カンボジアの伝統音楽では、それぞれの楽器が奏でる音の調和を最も大切にしています。それぞれの音色が重なりあった神秘的な音楽は、アプサラダンスのゆったりとした優雅な動きにぴったりです。

独特なリズミカルな音楽

アプサラダンスの演目

アプサラダンスにはいくつもの演目が用意されています。レストラン毎に披露される演目は異なることもありますが、一般的に有名な演目を紹介いたします。

アプサラダンス(Apsara Dance)

アプサラダンス

伝統舞踊の代名詞にもなっている1番人気の演目で、ほとんどのショーでは一番最後に演じられます。美しいアプサラ(天女)たちが、花の咲き誇る庭園で楽しそうに遊んでいる様子をダンスで表現しています。

中央の白い衣装を着たアプサラのみが「姫役」で、他のアプサラは「侍女」の役です。全員が美しいので気が付きませんが、役割分担されていますね。

漁師のダンス(Fishing Dance)

アプサラダンス・漁師のダンス

こちらもカンボジアの伝統的な民族舞踊の1つです。魚を獲るカゴをもった男女が、漁師に扮してダンスをします。初々しい恋の駆け引きもみどころです。

ココナッツダンス(Coconut Dance)

アプサラダンス・ココナッツのダンス

民族舞踊のダンスです。半分に割ったココナッツの殻をたたきながら踊ります。カンボジア南東部のスバイリエン州が発祥と言われている、躍動感あふれるダンスです。

リアムケー伝説のダンス(Liam Kay Legendary Dance)

ラーマーヤナ物語の中の一節。ラーマ王子とシータ姫とラーマ王子の弟が、森に入る場面から始まる演目です。森で待ち構えていた魔王ラーヴァナにシータ姫が連れ去られ、それを弟が救い出す場面です。

ラーマーヤナ物語は、魔王ラーヴァナにさらわれた妃シータを、ラーマ王子がランカ島(現在のスリランカ)に助けに行くという古代インドの叙事詩です。

金の人魚のダンス(Golden Fish Dance)

こちらもラーマーヤナ物語からの一節です。ラーマ王子の仲間、猿の武将ハヌマーンが、ランカ島へ橋をかけようとする際に、魔王の娘である金の人魚に協力をお願いするという場面です。
思わず笑みがこぼれる、コミカルなやりとりが見どころです。

シェムリアップでアプサラダンスを鑑賞できる場所は?

シェムリアップでは、アプサラダンスを鑑賞できる会場がいくつかあります。定番のものは、レストランとダンス会場が一緒になっているディナーショーです。アプサラダンス鑑賞におすすめのレストランを3つ紹介します。

クーレン2

クーレン2内装

多くのガイドブックにも紹介されている有名な、アプサラダンス鑑賞には定番のレストランです。約600人が入れる大きな会場で夕食とダンス鑑賞を楽しめます。お食事はビュッフェスタイルです。

名称Koulen II Restaurant
住所5, Street Sivutha, Mondul 2 Village, 17252, Cambodia
電話+855 92 630 090
営業時間11時~22時
(ビュッフェ開始:18時、ショー開始:19時30分)
Webサイトhttps://www.koulenrestaurant.com/

アプサラシアター(アンコールヴィレッジホテル内)

アンコールヴィレッジ1

ラグジュアリーホテル「アンコール・ビレッジホテル」内にあるシアター・レストラン。カンボジア料理を味わいながら、アプサラダンスなどのショーもお楽しみいただけます。静かな落ち着いた雰囲気でお食事を楽しみたい方におすすめです。

名称Apsara Theater
住所Street 26, Wat Bo Road Opposite Angkor Village Hotel, Siem Reap Cambodia
電話+855 63 963 361
営業時間19時~21時30分
Webサイトhttps://angkorvillagehotel.asia/theatre/

ポー・クイジーヌ

ポー・クイジーヌ1

茅葺き屋根の吹き抜けにモノトーンの家具が並ぶ、洗礼されたガーデンレストラン。クメール、アジア、西洋のフュージョン料理はどれもお洒落で雰囲気の良いガーデンレストランです。テラスでは伝統舞踏ショーが通年通して毎晩開催されています。南国の雰囲気を味わいながら、ロマンチックな夜を楽しめます。

名称Por Cuisine
住所No. 298, St. 22, Wat Bo Village, Sangkat Sala Kamroeuk, Siem Reap City, Siem Reap
電話+855 78 969 997
営業時間ランチ:11時~14時 / ディナー:18時~22時
(アプサラダンスショー:7時30分~8時30分)
Webサイトhttps://www.porcuisine.com/

天女の舞でクメール文化を存分に楽しもう

カンボジア伝統舞踊アプサラダンスは、遺跡のレリーフやデバターに色濃く残っています。アンコールワット観光で多く見られるデバターもそれぞれポーズや表情も演目の違いにより異なっています。実際のアプサラダンスを鑑賞すれば、クメール歴史の学びをさらに深いものにしてくれるでしょう。

アプサラダンスを鑑賞できるレストランは今回紹介したレストラン以外にも多くあります。ビュッフェ、セット料理、大きな会場、小さい会場といろいろありますので、ご希望の状況に合わせてお選びください。

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